前々回は『釣船清次(つりぶねせいじ)』『上酒有(じょうざけあり)』などの厄除けのお札について触れました。
我が家の玄関は『元三大師(がんざんだいし)』を祀っている旨を書いたところ、ブログを見てくれたお客様から「マスター、元三大師って何?」と尋ねられました。
実は我が家は天台宗であり、元三大師とは、「良源(りょうげん)」という平安時代の天台宗の僧で、比叡山延暦寺の中興の祖のことなんです。
中世以降、民間信仰で「厄除け大師」としてお祀りしています。

これが我が家の玄関ですが、この“痩せた鬼”のような姿をしているのが元三大師(慈恵大師とも呼ばれています)で、厄除けのお札になります。
天台宗ではメジャーなお札ですが、他宗派のお客様には珍しいものだったようですね。
さて、もうひとつ。
写真の左端にあるお札は『祓戸大神(はらえどのおおかみ)』です。
これは神道のお札ですので、クリスチャンやムスリムのお宅でないかぎり、ほとんどのお宅で祀られているのではないでしょうか?
では、チコちゃん風に……
「ねえ、ねえ、岡村〜。祓戸大神って何?」
「ドアの所で邪気の侵入を防いでくれるALSOKのような神様」なんて答えると、チコちゃんに叱られてしまいますよ。
答えは、、、
「祓戸大神は“ロックバンド”!」
うん?
ところで、みなさんは、神社でお祓いをしてもらったことはありますか?
神主さんが大麻(オオヌサ)という大きなハタキみたいなものをバサバサ振って、罪やけがれをはらい、清めてくれます。
「じゃあ、そのはらい落した罪やけがれはどこに行くんだろう?」なんて思いません?
掃除機で吸ったならタンクに貯まるし、ハタキで叩けば床に落ちるし、、、
そこで、活躍するのが4人組ロックバンド“四柱の神様”。
祝詞(のりと)によると、祓い落とされた罪や穢(けが)れは、まず、川に流されます。
そして、瀬織津姫(せおりつひめ)という神様が流れて来た罪・穢れを海へと流し込みます。
海では速開都姫(はやあきつひめ)が待ち構えていて、飲み込みます。
次に登場するのが、気吹戸主(いぶきどぬし)。
気吹戸主は速開都姫が飲み込んで集めた罪・穢れを息を吹いて“根の国”という異界へ吹き飛ばします。
そして、異界(根の国)では、速佐須良姫(はやさすらひめ)が飛ばされてきたそれらを消滅させるのです。
これら四柱の神様を合せて祓戸大神といいます。
つまり、個神名ではなくグループ名ってこと。

「祓戸大神年中御祓」のお札は、家に持ち込まれた災いや罪、穢れを異界へ吹き飛ばして消し去ってくれるというありがたいお札なんです。
こんな由来を思いながら、手を合せてください。
ご利益が上がるかも!
こうしてみると、私達のご先祖様は、古(いにしえ)より、海は異界とつながり、この世の罪やけがれを際限なく飲み込んで浄化していると考えていたことがよくわかりますね。
もしかしたら、福島原発には「祓戸大神年中御祓」のお札が貼ってあるのだろうか?
政府のセンセイ方は、よもや、汚染処理水を海に流せば祓戸大神が浄化してくれると考えているのではあるまいか?
さすがの速開都姫とてトリチウムは飲み込めまい!
あるいは、事故発生から10年間、漁師の生業を奪い脅かし続けている罪を都合よく洗い流して消し去ろうとでもいうのであろうか?
四柱の神様はこう言うと思うよ。
「たくさんの人々の生活を奪った罪は決して消せません!!」
いよいよ、近日中には、汚染処理水の海洋放出が閣議決定されるようです。
地元漁業関係者の理解は得られるのか、国民へきちんとした説明がなされるのか、私たちはこの問題を注視しなければいけないと思います。