2023年05月07日

ブラジャーのはなし


不満を表わす手段にはいろいろあるようです。

香港では雨傘が抗議の象徴とされ、中国ではゼロコロナに抗議する人々が白紙を掲げました。
うちの女房など不満の表現は、仏頂面、音をたててドアを閉める、食事の時にスマホを見て一切口をきかないなど、実に多様で、どれもわかりやすいものばかりです。
九州の下の孫はママに叱られるとだまって聞いていて、説教が終わったとたんトコトコお兄ちゃんのところまで行って八つ当たりするそうです。
一番の被害者はお兄ちゃん。
妹思いのとても優しい子なのに、あまりに可哀想すぎる (+_+)



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アラブ社会では、その昔、下着が不満に使われたことがあります。
時は1970年9月、ヨルダン兵が国旗の代わりにブラジャーを戦車に掲げたのです。
その頃、ヨルダン国内ではパレスチナ・ゲリラが活動を激化させていました。
1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸地域がイスラエルに占領され、パレスチナ・ゲリラは拠点をヨルダンに移しました。
彼らはヨルダン政府を無視して勝手に税金を徴収したり、挙げ句にフセイン国王の暗殺も2回計画しました。
それでも煮え切らない国王、、、
「我々は戦えない軍隊なのか!」不満を募らせる将校たちは、とうとう国旗を降ろし、ブラジャーを掲揚したのです。
これを知った国王はついにゲリラ掃討の軍事攻撃に出たのでした。

国王はじめ国民の多くは、元凶はイスラエルなのに、アラブ人同士で戦うことにためらいがあったようです。

のちにアラブ人同士の戦いは「黒い9月(ブラック・セプテンバー)」と呼ばれる悲劇に向かっていくのです。
「アラブの統一」を掲げ、アラブ人同士の衝突を終わらせようと奔走したのがナセル・エジプト大統領でした。
最終的にはナセル大統領の仲介により収束しますが、アラブ社会、とりわけヨルダンには禍根を残すことになったのです。



以前、私たちは和太鼓の公演で中東を訪問したことがあります。
当時、公演を主催してくれたレバノン大使館の代表が片倉全権大使でした。
大使は「黒い9月」当時、在サウジアラビア大使館で外交官をしていたそうです。
片倉さんに教えていただいたことによると、「『アラブはひとつ』と言っても、実際は王制と共和制の国で分断が生まれているんですよ。」とのことでした。
確かに、エジプト(52年)、チュニジア(57年)、イラク(58年)、リビア(69年)と中東で続く一連の政治変革は「王制打倒」でした。
ブラジャーを掲げたヨルダン軍とパレスチナ・ゲリラの衝突も「王制対共和制」の中に位置付けられるものなのかもしれません。



3年前にアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルが国交樹立で合意した際も「なんで?」と思いましたが、これも「アラブ対イスラエル」なんて単純な形で理解しようと思ってもムリ。
UAEはイスラムの中でもスンニ派が大勢を占めています。
シーア派大国イランの影響力拡大を脅威と感じるUAEが、イスラエルと手を組んだ結果(敵の敵は味方)と見ることができるのです。
第二次世界大戦後の「イスラエル対アラブ」あるいは「ユダヤ対イスラム」といった比較的単純な民族・宗教間対立は、今や複雑化し「王制対共和制」の政治体制による対立を内在した「スンニ対シーア」という宗派対立へ形を変えてきているのです。

私たちが中東を訪れた頃は、世界で「パレスチナ和平」が関心を集めていました。
今の若い人はきっとパレスチナと聞いても“PLO”を思い浮かべる人は少ないのではないでしょうか。
今ではパレスチナ和平への国際社会の熱意なんてすかっり無くなってしまったかのよう、、、
さみしいかぎりです。



ヨルダン軍が戦車にブラジャーを掲げてから、早50年余。
パレスチナの人々にとっては、9月の色はいまだ黒いままなのかもしれません。

世界の目はウクライナにばかり向けられています。
G7しか頭にないキシダさんはウクライナを電撃訪問したので、今度はグローバルサウスについて何かしなければなんて考えちゃったのでしょうか。
結果、“金満外遊”と揶揄されるほどの1700億円もの大金をバラまいてきちゃいました。
カネでアフリカを買う前に、まずは困窮に喘ぐ日本国民の生活を考えてくれよ。
私達の生活を直撃しているエネルギー高騰や物価高、、、
ウクライナ資源の確保が難しい今こそ、少しは中東に目を向けてみてはいかがでしょう?




先日の手製爆弾を首相めがけて投げつけたおバカさん。
キシダさんのやることに賛同できず、立腹ゆえの凶行でしょうが、、、
ブラジャーだけの半裸で応援演説会場に出かけるくらいにしておけばよかったのに、、、
民主主義において「暴力」は「抗議の表現」にならないことを、誰か教えてあげる大人はいなかったのだろうか?



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posted by るしあん at 22:12| Comment(0) | 日記
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