術後にまた腰痛が出始め、鍼灸マッサージ医院に通うようになってかれこれ丸2年が経ちます。
縁あって開店当初から盲学校の子ども達とお付き合いが始まり、今はOBの鍼灸師さんのお世話になって、そうしてどうにか歩けているのですから、縁とはつくづく不思議なものです。
そして、身体的な面だけでなく、通院帰りに必ず女房と二人でランチをするのが恒例になっていますので、夫婦円満にも針が効いているようです(*^_^*)
先日、鍼灸の帰路、立ち寄ったお店で久しぶりに「さつま白波」を飲みました。
有名でお手頃価格で広く流通している銘柄なので、逆に日本食店に置いてあるのが珍しい。
同級生が営む蕎麦屋では「三岳」「赤兎馬」珍しい色の「霧島」、るしあんでは「明るい農村」「薩摩茶屋」「黄色い椿」など、多くの店で白波よりちょっとレアなものを提供しています。
こだわりの強い居酒屋の大将が「赤星」(サッポロビール)を出しているようなものなのかなあなんて思っていたら、、、
いや〜、これがなかなか美味しい料理を出してくれるお店で、「さつま白波」も美味しく飲むことができました。
さて、白波(白浪)といえば、飲兵衛の私がまず思い浮かぶのは焼酎ですが、一般的には歌舞伎の「白浪五人男」ってとこでしょうか。
白浪五人男は弁天小僧が主役の盗賊のお話し。
歌舞伎に疎(うと)い私でも
「問われて名乗るもおこがましいが」「知らざあ言ってきかせやしょう」
のフレーズは子どもの頃から知っています。
半世紀も前に放送が始まり、夢中になってテレビを観た「ゴレンジャー」はこの白浪五人男がベースになっているのは有名な話し。
さすがにゴレンジャーは「問われて名乗るもおこがましいが」とは言いませんが、戦闘の前に「アカレンジャー」と名乗りを上げるのは歌舞伎の様式美をそのまま取り入れています。

話しは少し脱線しますが、戦闘前に名乗りを上げるのは、自分の功名と相手への敬意からで、武士の美徳とされてきました。
元寇の際には、敵の面前に立ち「やあやあ、我こそは」と言ってる間に、「あいつあんなところで何を大声を出しているんだ!?」と元の兵士の格好の的になって、多くの武士が矢で射殺されてしまったそうです。
そういう意味では、戦隊ヒーロー物に登場する敵役は、武士の心得を持つ“ちゃんとした悪者”ということになるのでしょうね。
話しを戻します。
では、なぜ「白波(白浪)」が盗賊を表わすようになったのでしょう?
これは西暦184年まで遡ります。
中国後漢も終わりの頃、「黄巾の乱」が起きました。
太平道の信者が教祖の張角を指導者として起こした組織的な農民一揆です。
五行で土を表わす黄色の頭巾を目印にしたことから黄巾の乱と呼ばれました。
1年ほどで鎮圧されたのですが、農民軍の残党が山東省にあった白波谷に立てこもり、抵抗や略奪を繰り返したのです。
そして付いた名が「白波賊」。
これが白波が盗賊を表わすようになった由来なのです。

「白浪五人男」は河竹黙阿弥の代表作ですが、ほかにも盗賊が活躍する「白波物」をたくさん残しているのです。
日本の3大ヒーローといえば、この「ゴレンジャー」に加え、「ウルトラマン」「仮面ライダー」です。
半世紀も前に登場したこれらヒーローはシリーズ化して今も愛されて続けています。
我が家も3世代に亘って、これらヒーローに夢中になっています。
そして、今や、日本のみならず世界中でファンを獲得しているのです。
こうしたコンテンツ産業は、日本の新たな海外戦略の重要な要素になるまでに成長を遂げました。
“たかが”特撮、“されど”特撮なのです。

中国の谷に潜んで悪さしていた盗賊もまさか2000年後の遠い未来に自分達がネタ元になったヒーローが世界中で活躍しているとは夢にも思っていなかったろうなあ……
いや〜、歴史って実に面白い!!!