2025年07月14日

抵抗


徳田秋声の研究で知られる小説家 野口冨士男は映画の造詣にも深かったようで、、、
ある日、ラジオを聴いていた妻が野口に言ったそうです。
「おとうさん、日本が戦争を始めたわ。アメリカですって。」
野口はすかさず返しました。
「出かけるから支度しなさい。」

なんと向かった先は新宿の映画館。
アメリカ映画の『スミス都へ行く』が上映されており、「これが見納め」といち早く出かけたそうです。
野口が予想した通り、間もなくアメリカ映画は敵製としてすべての映画館で上映が禁止されることになったのです。
「たとえ戦争相手の国であろうとも面白いものは面白い」という映画好きの野口らしいエピソードです。



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『スミス都へ行く』(1939年)はコメディー映画の名作。
上院議員の空席を埋めるために担ぎ出された青年団長のスミス。
何もできないと目論んでいた議会に反し、意外にもスミスは政治に情熱を燃やすのです。
必要以上の熱意で行政にあたり、やがて議員の汚職問題を知ることになります。
政治腐敗と戦うことを決意したスミスは、議会において、25時間にも及ぶ大演説を繰り広げるのです。

野口は後に、この映画についてこう語っています。
「当時の日本議会は軍国主義一辺倒でした。映画はまさに対蹠的な内容でした。」
(対蹠=たいせき・たいしょ:足の裏を合せたかのように正反対の位置関係)
こうしたアメリカの進んだ文化を知る野口は、この時すでに“アメリカには勝てない”ことが判っていたのかもしれませんね。
NHK朝ドラ『あんぱん』主人公のぶの夫次郎は船員として欧米を知っているのですが、出航前に妻にそっと話しかけます。
「この戦争はのぶの思うような結果にはならない。」
愛国の鑑と呼ばれるのぶは「そんな事言うたらいかん」と一蹴、、、現実を見ようとしない愚かさが描かれていました。
まっとうな意見が封殺されてしまう、、、戦争とはそんな愚かなものなのです。



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この長時間の演説は、英語ではフィリバスター(=議事妨害)と呼ばれています。
日本では、質問や演説などは時間の制限が設けられているので、議決投票の際にゆ〜っくり歩く“牛歩戦術”なるものがありますが、最近はトンッと見かけなくなりました。

アメリカではつい先日、フィリバスターが行われました。
なんと映画スミスよろしく、ブッカー議員が25時間4分もの大演説を繰り広げたのです。
米国議会史上、最長記録だそうです。
黒人のブッカー議員はトランプ政策を猛批判。
議会軽視を続ける政治手法を痛烈に批判し、民主政治の行方を懸念する声を上げたのです。
そして、世界を相手に経済戦争を布告するような「相互関税」を行って、国際秩序を乱しているのはトランプに他ならない言い切りました。



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果たして、ブッカー氏の声は大統領に届いているのか!?

まっ、ただ唯一救いなのは、「まだ長時間演説のフィリバスターが許されている」ということなのでしょう。
「言論統制」まで行われるようになれば、ロシア・中国・北朝鮮と同じになっちゃいますからね、、、



かつて誰かが言っていました、
「アメリカの強さの秘訣は政治的復元力だ。」と。

ただ、、、
あと3年も振り回されることに我慢して、次の大統領の復元力に期待するのは、各国ともちょっとしんどいだろうなあ――












posted by るしあん at 00:21| Comment(0) | 日記
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